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GATTACA [映画]

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人に勧められてGATTACAという近未来SFサスペンス映画を観た。
美しいシーンが続く映画だった。
主人公と恋人が朝日が昇るのを見るところでは、
自然ではなく人工物である電波望遠鏡みたいなものに
朝日があたり出していた。
たとえば、凪いだ海に朝日が昇ってきて、
だいだい色の光の帯がきらきら揺れる、という感じで、
磨かれた人工物に朝日が煌めいていた。

話はDNA操作で欠陥のない子どもを産むという時代の話。
遺伝子操作されていない人間は、「神の子」と呼ばれはするが、
いろいろ欠陥があるので、「不適切者」とも呼ばれ差別される。
その差別を乗り越えて、宇宙飛行士になるという夢をかなえる
ビンセントという「不適切者」の話。

今のNASAみたいな組織でこの映画の題名にもなっている
GATTACAでは、
いつも血液検査や尿検査などの遺伝子検査があるし、
IDカード代わりに、血液が使われている。
だから、DNAに欠陥があるビンセントが宇宙飛行士になることは
不可能。

どういう風にして夢をかなえたかというと
ジェロームという完全無欠のDNAを持つ男から
血液や尿をもらって成りすまして宇宙飛行士になる。

細かい話は省いて、
勧めてくれた人が最後にジェロームが死ぬことについて
感想を求めていたので書いてみたい。

ジェロームのセリフ。
「ぼくは金メダルを取る能力はあったけど、銀だった。」
ジェロームは金メダルでなかったことに劣等感を持って
自分で自分の足をだめにしたのだろう。
ジェロームはビンセントを通して
2番手であるという劣等感を拭い去ることができた。
ジェロームはビンセントをリスペクトした。
または人として愛した。

今後はビンセントがジェロームとして優秀な宇宙飛行士として生きる。
ジェロームのセリフ。
「僕はお前に体を貸して、夢をもらった。」
ジェロームの意識では、名前を貸したのではなくて
体ごと人生ごとビンセントに渡したのだろう。
ビンセントが夢をかなえて、ジェロームとして宇宙に旅立ち、
ジェロームとして生きていくのは、
ジェローム本人の夢がかなうことにもなった。

ビンセントに完全にジェロームとして生きてほしい。
ビンセントがジェロームなら、
ジェロームがジェローム自身を誇りに思うことができるから。
そういう願いから、ジェロームは自分の体を抹殺したのだと思う。


追加
マイナス方向から考えてみると、
ジェロームは、2番手でいることに耐えられなかったのかも。
金メダルを取るはずだったのに銀メダル、2番手だった。
それに耐えられなかったから、自分を傷つけた。
ビンセントの影として生きることは
ビンセントが自分より劣っているなら許せる。
しかし、ビンセントが自分より勝っているとなると話が違う。
だから、銀メダルを首にかけて自分を抹殺した、
とも考えられる。
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大摩

最後のシーンで、焼却炉の中で燃える銀メダルが、熱せられて金メダルに見えたような気もしました。

宇宙に旅立ったビンセントは、もしかしたら地球には帰ってこられないかもしれないし(目的を達成して地球に戻る目的は無くなった)、ジェロームの言葉からも、数年分の(血液や尿などの)体組織しかストックしていないことから、ビンセントの寿命もあまり長くはないのだろうと考えていたのではないか。

もし地球に帰ってこられたなら、その時に、「地球にも帰る場所」があるということを示したかったのかもしれない。

ジェロームという存在が二重に存在すれば、ビンセントはビンセントでもジェロームでも無くなってしまう。ビンセントという存在はもうすでに抹消されており、この世には存在しない。

数年分の体組織を準備したということで、ジェロームはもう戻らない(それが死という決断であったとしても)、それもビンセントは気づいている。

ビンセントも、宇宙という生命の誕生の場所に戻ることで、生まれたところに還るという死を提示していたのかもしれない。

最後の黄金色の溶けた銀メダルは、ジェロームがビンセントに贈った金メダルなんだと思う。燃えて煙になって、遥か彼方の宇宙に届けたかったのかもしれない。

銀メダルしか獲れなかったジェロームが唯一自分の負けを自分自身で認めた瞬間であり、遺伝的優劣では推し量れない、ビンセントの意志と忍耐の強さに敬意を表して贈ったプレゼントだと思いました。
by 大摩 (2013-11-18 21:48) 

elm

なるほど、そういう観方もできますね。
ビンセントは心臓の病を抱えていますから、
地球に帰ってくる可能性は少ないかもしれませんね。

最後の銀メダルをどう解釈するかですねえ。
映画って面白いですね。
by elm (2013-11-22 00:24) 

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